ビッグホスピタル特集 - 静岡県立静岡がんセンター

ビッグホスピタル特集

静岡県立静岡がんセンター

「主体性」「協調性」「説明力」を養い、
多職種チームで患者さんとご家族を徹底支援。

Top Interview

看護部長
水主 いづみ(すいしゅ・いづみ)

1986年国立大蔵病院附属看護助産学校看護婦科卒業。国立がんセンター中央病院、鹿児島大学医学部附属病院勤務。91年明治学院大学社会学部社会学科入学。卒業後は、佐賀医科大学医学部看護学科で教員として勤務。2004年静岡県立静岡がんセンター入職。10年順天堂大学大学院医学研究科博士課程単位取得満期退学。19年より現職

静岡県立静岡がんセンターでは、「患者さんと家族を徹底支援する」という理念を実現すべく、さまざまな職種が協働し「多職種チーム医療」を展開しています。看護師は、チーム医療に必要な「主体性」「協調性」「説明力」を養い、人と心を通わせる「人間力」も磨いています。

患者・家族支援と多職種チーム医療に必要なさまざまな能力を養成

 当院では、基本理念に掲げる「患者さんの視点の重視」にもとづき、「がんを上手に治す」「患者さんと家族を徹底支援する」「成長と進化を継続する」というシンプルな3つの理念の実現を患者さんへの約束としています。
 その中でも、看護師が特に心に留め、実現を心がけているのが、「患者さんと家族を徹底支援する」です。ただ、患者さんとご家族への徹底支援は、看護師だけでできるものではありません。それは、多職種で構成されるチーム医療によって初めて可能となります。
  「多職種チーム医療」を担う各職種には、「主体性」や「説明力」が求められますが、特に看護師は、患者さんやご家族からの訴えや要望を聞き、それらをどうすれば具現化できるかについて、自分の言葉で主体的に医師や他の職種のスタッフに説明できなければなりません。
 しかし、一般的に看護師は、たとえば医師とくらべると、人前で根拠にもとづいた自分の意見を述べることに消極的になりがちです。そこで、「主体性」や「説明力」をしっかり身につけてもらえるような環境づくりに努めています。
 また、「協調性」がなければ、チーム運営はできません。あるときはリーダーとして、あるときはメンバーのひとりとして、そのときどきのチーム構成に応じて、自分の置かれた立場を素早く把握し、自分の成すべき役割が果たせる。そんなヒューマンスキル(対人関係能力)を持てるような指導も重視しています。
 さらに、多職種で協働するには周囲にいる人たちと心を通わせられる「人間力」が不可欠です。それが備わっていれば、患者さんやご家族の前でも、人の心や人目に配慮した発言ができる看護師になれるはず。ですから、常に「人間力」を磨くよう話をしています。

認定看護師など資格取得のためのサポート体制も充実

 当院は、がん専門病院なので、外科、内科のいずれに配属されても、急性期、慢性期、終末期の患者さんを看られます。緩和ケアを学びたいと、当院を希望される方も少なくありませんが、当院では年間1,200~ 1,300 名の看取りをしていますので、緩和ケアの豊富な経験ができるでしょう。
 がん看護では、告知後のサポートや治療法を選択する意思決定支援などにおいて、デリケートな問題に直面することが多いです。そのため看護師は、しばしば、コミュニケーション能力を問われます。当院では、臨床心理士などによる講義や、患者役、看護師役、医師役に分かれてのロールプレイなどを通じて、患者さんやご家族の心情に寄り添い、どのように会話を進めるべきかを習得できる機会を設けています。
 また、認定看護師や専門看護師をめざす人に対する公費のサポート体制も充実しています。看護師がスキルアップするための教育費は惜しまない方針です。

 
人との出会いの積み重ねの中で看護師として成長する

 看護師のキャリアは、入職した病院や出会う人によって変わっていくと思います。私自身も、看護師になって数年後、地元に戻り、大学病院に勤務したときにキャリアを考え直す転機が訪れました。その大学病院では医師中心の医療が行われ、看護師が医師に意見を述べられるような雰囲気は、まったくありませんでした。こうした状況を打破し、医師と対等に話せるようになるには、もっと教養がなければならない──。一念発起した私は、27 歳で再び上京し、看護師として働きながら、大学で猛勉強をしました。
 大学卒業後は、地元へ戻ろうと考えていたのですが、以前、勤務していた病院の元師長から「大学の教員にならないか」とのお誘いがあり、思いがけず10 年間、看護学科で教育と研究にたずさわることになりました。自分の半生を振り返ると、私を見守り、導いてくれた人がいたからこそ、今の自分があるのだと強く感じます。
 看護師としての仕事観が変わるような出会いもありました。
 新卒で入職した国立がんセンター中央病院(当時)では、そのころ、まだ珍しかったがん専門病院ということもあり、新聞社の論説委員や映画監督など著名な患者さんとも接し、看護師にならなければ出会えなかったであろう方々から大いに刺激を受けて、人生について多くを学びました。看護師は自分がケアしているようで、実は、患者さんにケアされているのだと感じ、また得られるものの大きさに他の職業にはないやり甲斐にも気づきました。
 同院の麻酔科医からは、人として患者さんに接する態度の基本を学びました。ある日、その先生と患者さんとの会話を聞いて驚きました。先生は、緩和的治療をしている患者さんのベッドサイドへ行くと、痛みについて尋ねるより先に中吊り広告にあった週刊誌の話題を切り出したのです。患者さんは、痛みや病気の話だけでなく、世間話をしてくれる医師に、ほっとした表情を浮かべていました。「医学的なアプローチも必要だけれど、人間同士の普通のコミュニケーションも忘れてはならないよ。患者さんはゲストで、たまたま病気を持っているだけなのだから」とその先生に言われ、目から鱗が落ち、人として患者さんにどう接するべきか、考えを新たにしました。
当院には、さまざまな貴重な「出会い」がきっとあります。その出会いを大切に、ともに成長していきましょう。