ビッグホスピタル特集 - 千葉大学医学部附属病院

ビッグホスピタル特集


ちばだいがくいがくぶふぞくびょういん

千葉大学医学部附属病院

大切なものを変えないために一緒に変わり続けるチームへ 大切なものを変えないために一緒に変わり続けるチームへ

副病院長・看護部長

箭内 博子

やない ひろこ

高度急性期病院という、より複雑で高度な医療が提供される場において、患者さんの人生に向き合い、適切な医療・ケアを提供することを使命として、自律的な学びと、個々の強みを伸ばすことを意識しています。そして、看護が人と人の間を巡り、知をつないでいく「知の巡る組織づくり」に努めています。

看護師達の370もの想い(言葉)から紡いだ理念

 当院は「コロナ診療と高度医療の両立」を方針に掲げ、地域医療の最後の砦としての役割を果たしてきました。並行して、急性期医療の提供体制の充実のため、2020年度に新棟をオープンし、救命救急センター、ICU、手術室を拡充、2021年度にはHCUも開設しています。来年にはSCUが開設予定で、より一層地域へ貢献できる大学病院へと体制を整えているところです。
 そのような中、看護部では、改めて当院の看護師たちが大切にしてきた価値観を結晶化し、2年前に新たな理念を作りました。それが「『じぶんらしく生きる』を支え、未来をつくる」です。わかりやすい、実践のよりどころとなるような理念にしたいと考え、全看護職員を対象に「ことば」を募集したところ、370個も集まり、そこから価値観を紡ぎ出したものです。
 自分たちが実際に大切にしてきた看護の軸を言語化したものなので、染み込むようになじみ、実践につながっています。2020年の新型コロナ第3波での院内クラスター発生という危機にも、院内各所から集まった臨時看護チームがすぐに立ち上がり、「クラスター下にあっても、看護の使命は患者さんの回復の過程を遅らせないこと」というスローガンを共有し、難局を短期間で乗り越えてくれました。
 高度急性期医療を担う大学病院において、平均在院日数11日間という中でも、患者さんの人生と、生活者としてのその人をイメージし、入院期間はそのほんの一部分と捉え関わっていく姿勢は、さまざまな状況下において、力を発揮しています。

何のため? 目的を共有できる対話の生まれる環境づくり

 変化の多いこの時代において、看護の原理・原則に基づく「ぶれない看護の軸」を大切にするために、私たちは恐れずに変化の一歩を踏み出してきました。看護提供方式の変更もその一つ。今、受け持ち制看護からチーム制へと移行している最中です。在院日数の短縮化により、看護師が実際に受持ち患者さんと顔を合わせられる日数も減っています。患者さんのメリットを考えると、果たして本当にそれでいいのかを見直した結果です。
 一番大切にしなければならないものは何か、何のための看護かを考えていくと、おのずと答えが見えてくるもの。目先の手段や方法から考えるのではなく、患者さんの視点に立って、何が大切なのかを考える力をつけようと、いつも言っています。ただ、何も一人で考えることばかりではありません。看護は人と人の対話によって成り立つもので、それは対患者さんだけではなく、看護師同士も、多職種との対話も含めて言えることです。対話によって良いものを創り出していくのが基本だと思っています。
 ですから、誰もが自由に発言できるチームを目指しています。新人看護師も安心して何でも聞けて、何でも話せる環境を整えていますので、疑問や自分の考えを、素直に表現して欲しいです。
 大学病院であることの強みを生かし、教育体制の充実にも注力しています。新人教育にとどまらず、実践・教育・研究面で千葉大学看護学研究院と連携し、また的確な臨床判断能力と専門的技術を持つジェネラリストとしての特定看護師の育成にも取り組んでいます。
 看護師を目指す人は、自らの知識や技術を発展させたいという意欲を持ち続けている人が多いように思います。そんな皆さんに適した環境であると言えるでしょう。

看護はすべての出会いの中で磨かれていくもの

My Favorite Item
My Favorite 病棟で働いていた頃に患者さんからいただいた短歌や、折々の仲間からの寄せ書きは、元気の源。目一杯褒めてくれているメッセージから勇気をもらえます。

 私自身が、看護師として人と向き合っていくことを初めて意識したのは、ある患者さんとの出会いがきっかけでした。臨床実習で終末期の患者さんと出会い、毎日顔をあわせているうちに辛くなってしまった時のこと。その日、病室になかなか顔を見せない私のことをその方が心配してくれていたのを知り、看護師が逆に患者さんを消耗させてしまうなんて、本当に申し訳ないことをしたと、それからは何があっても患者さんに向き合っていこうと誓いました。その時の患者さんに限らず、すべての人たちとの出会い、関係性、表出された感情のすべてが、今の私を形づくっていると思っています。やはり、いろいろな意味で一人ではないというところが、看護の醍醐味ではないでしょうか。
 自律という言葉を大切にしていますが、それは何でも一人でできることではなく、自分の弱いところを認めて、人の力を借りられることだとも思います。お互いがうまく補完し合えるような仲間たちがチームになってはじめて、質の高い看護が提供できるのだと思います。
 教育体制も、自律を意識した形に変えています。以前はクリニカルラダーの段階ごとに必修の研修を設けていたのですが、ラダーレベルⅢ以上は、自分で受けたい研修を選択して受ける、自律的な学びと個性を大切にした形になっています。
 何でも最初からできる人はいません。周囲の力を借りながら共に成長していきましょう。教える方も一緒に成長しています。「知の巡る組織」として、社会のどんな変化にもしなやかに立ち向かうことのできるチームになっていきたいと思っています。

プロフィール
PROFILE PROFILE

箭内 博子

やない ひろこ

千葉大学医学部附属病院

副病院長・看護部長

1988年千葉大学医学部附属病院入職。

呼吸器外科・内科、整形外科、麻酔科などを経験し、2006年看護師長に昇任。

同院初となる特別病床・緩和ケア病床では、初代看護師長として病棟運営と看護サービス提供の基礎を築いた。

その後、質管理担当看護師長や医療安全管理部GRMとして組織横断的に活動し、業務の標準化、チーム医療の実践と質向上、安全管理体制の構築などに携わる。

2013年より副看護部長。新設ポストである経営・コンプライアンス担当として、データマネジメントなど看護の質向上に力を注ぐとともに、経営改善対策を推進。2018年千葉大学大学院看護学研究科修士課程修了(看護学修士)、2019年より看護部長を務める。

HOSPITAL INFO
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