注目の認定看護師&専門看護師特集
専門看護師 がん看護

中学1年生のときの作文ですでに「看護師になりたい」と書いていたが、高校卒業後は四年制大学へ進学し、英語教員を目指す。それでも、かつての夢を諦めきれず、大学卒業後、看護学校に。4年間、臨床を経験した後、神戸市看護大学に編入学し、初めて学問として看護学を学ぶ。高齢者施設で看護師として働いたのち、2010年に関西電力病院に入職。2014年3月、神戸市看護大学大学院看護研究科を修了、がん看護専門看護師に認定。
がん看護を一歩でも前進させるため、自分にできること

関西電力病院の看護師・戸田愛さんは、そのキャリアの大半でがん看護にかかわってきた。診断期、治療期、再発進行期、終末期…それぞれの過程で様々な問題を抱えるがん看護だが、日々の実践に忙しい看護師にはそれらを解決する余力はない。患者とその家族に直接かかわる臨床こそが自分の居場所と考えていた戸田さんだが、がん看護の現状を一歩でも前進させるためには、「実践・相談・調整・倫理・教育・研究」すべての面でアプローチできる専門看護師になることこそが、自分にできる最良の方法だと思えたという。
良い実践家の看護師は大勢いる。しかし…
“診断期から終末期さらには遺族に至るまでの家族ケア”は、戸田さんが大学院の専門看護師コースで学んでいたときから一貫して持ち続けている研究テーマだ。第二の患者と言われる家族へのケアが重要なことは看護師なら誰でも知っている。しかし、現場ではなかなかそこまで手がまわらないのが現実。それでも、大学院の担当教員から「家族をケアしてこそ、患者をケアしていることになる」と教わり、その重要性を再認識した。今でも、がん患者の配偶者と頻繁に面談し、経験した家族内コミュニケーションについてのヒアリングをコツコツと続けている。
「良い実践家は大勢います。でも、なぜそれが良いケアなのか、なぜダメなケアなのかを、明文化して広く伝える研究のできる看護師もこれからは必要。私はそういう存在になりたい」と話す。
それでも、あくまでも原点は臨床だと繰り返す戸田さん。
「研究の結果は私自身が実践に落とし込んで、研究と臨床を結びつけていきたい」という。
この先に成長があるとわかるから辛いだろうことにも挑戦できる
「未来がある病院」。看護師として多様なキャリアパスを経て、戸田さんが関西電力病院に入職したのは、そんな印象を持ったからだ。戸田さんが入職した2010 年当時、関西電力病院は変革の時期にあった。編入学した大学で学んできたことが、病院経営や看護師教育の分野において、新しく生まれ変わろうとしているこの病院では、学んだことを活かせるかもしれない、そう思ったという。そして、生涯、看護師として生きていく決意を固めている自分にとって、将来のキャリアを託せる病院だとも感じたという。事実、組織の理解もあって、わずか入職3 年目にして専門看護の勉強をするために大学院へ進学できた。
「期待に応えるためにも大学院での毎日がどんなに大変でも、やり遂げる決意でした。どの職種でもそうですが、辛いことを乗り越えたときに自分も成長できたという実感が味わえます。裏を返せば、この先に成長があるとわかっているから、辛いことにも挑戦できるのです。しかも、職場の理解という強い味方と、学んだことを臨床に還元したいという強い思いが、私をしっかり支えてくれました」
専門看護師として病院に戻った戸田さんは、副主任という役職にも就いた。
「これから5 年間は、まず患者さんと丁寧にコミュニケーションをとって、学んできたことを役立てたい。管理職としての能力も身につけながら、しっかりと患者さんに向き合いたいです。教育機関と病院をつないでいく役割も担っていきたいですし…」と戸田さんの夢や将来の目標は膨らむばかりだ。