注目の認定看護師&専門看護師特集
認定看護師 認知症看護

看護師になった理由は「“おばあちゃん”っ子で、 お年寄りに寄り添える看護師になりたいと思ったから」。認知症を発症した高齢の患者さんと接する中で、自然と認知症看護に大きな関心をもつようになる。20代の若さで認定看護師の資格を取得したばかり。
患者さんに寄り添う看護に、自分の力は足りているのだろうか?

約10年後には高齢者人口がピークを迎えると言われている高齢社会において、認知症患者のケアは深刻な問題。大阪・北摂エリアの地域医療支援病院として総合急性期医療を担う大阪府済生会吹田病院でも、それは重大な課題の一つであり、認知症看護認定看護師・今村恵さんにかける期待は大きい。今村さんは入職11年目。「認定看護師に挑戦するには、自分はまだキャリアが十分でない」という不安はあったものの、どうしても勉強してみたかった。認知症患者さんの安全を配慮して行ったことが、「ちゃんと患者さんの思いに寄り添えていないどころか、逆に患者さんの心を傷つけてしまっているのではないか」と自分 の力不足を感じることが多かったという。勇気を振り絞って認定看護師への挑戦を上司に相談したところ「あなたらしいね。やってごらんなさい」と背中を押してもらえた。日ごろから高齢の患者さんに接する際の姿勢を評価されたようで「本当にうれしかった」という。
思い込みから、勝手に患者さん像をつくりあげてしまっていないか?
今村さんは認知症看護を本格的に学んだことで、いかに自分が勝手な思い込みで看護をしていたかを思い知ったという。認知症患者さんは、言葉以上に表情や仕草でいろんなサ インを出している。それを読み解くことが認知症看護で最も重要なことなのだが、勝手に患者さん像をつくりあげてしまって、誤った判断に陥ってしまうケースも少なくないのだ。看護師は患者さんから発せられる言葉、表情、仕草にいろんな角度から意味を探す必要がある。今は、認定看護師として、このことを認知症患者さんにかかわるすべての看護師たちに伝えていく活動を目指している。
日常を徹底して振り返ることで、自分の看護や判断に自信が持てる
高齢社会が進み、認知症患者さんの数が増えているにもかかわらず、認知症看護への取り組みが十分とはいえない病院は思いのほか多いと今村さんは言う。しかし、現場には問題意識を持つ看護師たちが大勢いるのも事実。実際、今村さんが一緒に認定看護師を目指した仲間の多くが、一般病院に勤める看護師だった。皆が日ごろの看護の中で、認知症患者さんの看護にあたり、「なんとかしたい」と思っているのだ。こうした仲間の存在が今村さんにも大きな勇気を与えている。同じ思いで頑張っている仲間と交流することで、自分も成長したいと考えているからだ。また、認定看護師になって一番変わったのは、日常の“振り返り”を徹底するようになったことだ。自分がどういう考えで判断し行動したのかを一つ一つ検証するようになった。自分の判断に責任を持つためにも、その判断力を磨きたいと考えている。もちろん、学会に出席したり、専門誌を読むといった勉強は必要だが、なにより日常で一番多くの時間を割いているのは看護の現場。そこで経験したことを、それ以降の看護に活かせる力に変えていくことがなによりも効率的で効果的な勉強だと今村さんは言う。