WORD 05 振戦
振戦とは

自分が動かそうと思っていないにもかかわらず生じてしまう「ふるえ」のことです。
ふるえは誰にでも起こるものです。緊張したときや恐怖を感じたとき、寒いときに手足がふるえることは誰にでもあります。これらのふるえは「生理的振戦」と呼ばれ病気ではないため、治療する必要はありません。一方で病気の症状としてふるえが出ることがあります。看護師として注目すべきはこちらの振戦です。
振戦の種類
振戦には主に次のようなものがあります。
安静時振戦
身体を安静にしているときに起こるふるえです。寝ていたり立っていたり、椅子に座っていたりという日常的にくつろいでいるときに出現します。ふるえている手や足を意図的に動かすとふるえが少なくなる特徴があります。手足だけでなく、頭や顎、唇、舌に現れることもあります。この症状でもっともよく見られるのはパーキンソン病です。
治療は抗パーキンソン病薬がふるえを抑えるために用いられます。
「休止時振戦」「静止時振戦」とも呼ばれます。
姿勢時振戦
腕を上げるなど重力に逆らう姿勢をとったときに現れるふるえです。腕を身体の前に出してその姿勢を維持しようとしたり、箸やコップを持つときなどがそれにあたります。安静にしているときには出現しません。
甲状腺機能亢進症、このあと紹介する本態性振戦などで見られます。治療にはβ受容体遮断薬が用いられます。
企図振戦
文字通り、自分から何か動作を起こしたときにふるえが発生するもので、動作が目標に達したときにふるえが最大になり、その姿勢を維持するとふるえが持続します。人差し指でボタンを押すなどの行為がそれにあたります。安静時に出現することはありません。
原因となる疾患として、多発性硬化症、小脳の障害などが考えられています。小脳の障害が改善すれば症状もなくなりますが、治療するのが難しいのが現状です。
本態性振戦
「本態性」は医学用語で、症状は認められるもののその原因がわからないものを指します。コップを持ったり字を書いたりといった場合にふるえたり、頭や首がふるえる場合もあります。青年期のころに発症することが多く、その後もその症状が続き、加齢によって症状が強くなっていく傾向があります。
日常生活に支障をきたさなければとくに治療は行いませんが、症状が強く出る場合にはβ受容体遮断薬が投与されます。また、外科手術が行われることもあり、脳に電極を埋め込む「脳深部刺激療法(DBS)」は、電気刺激を与えることでふるえを抑えます。
名前 | 内容 | 考えらえる疾患 |
---|---|---|
安静時振戦 | 身体を安静にしているときに起こる | パーキンソン病 |
姿勢時振戦 | 腕を上げるなど重力に逆らう姿勢をとったときに現れる | 甲状腺機能亢進症 本態性振戦 など |
企図振戦 | 自分から何か動作を起こしたときに現れる | 多発性硬化症 小脳の障害 など |
本態性振戦 | 症状がふるえだけで原因がわからないもの | (原因不明) |
更新日:2017年11月20日(月)