ビッグホスピタル特集 - 東京女子医科大学病院

ビッグホスピタル特集

東京女子医科大学病院

白石 和子

慈しむ心で、患者さんとご家族の
いのち・暮らし・尊厳をまもり支える

Top Interview

副院長・看護部長
白石 和子(しらいし・かずこ)

千葉県出身。東京女子医科大学看護短期大学(現・東京女子医科大学看護学部)を卒業後、東京女子医科大学病院へ入職。脳神経センター(当時)で約20年の経験を積むなかで主任になり、各種病棟や救命救急センターを経て副部長に。2014年に東京女子医科大学八千代医療センターへ副院長兼看護局長として赴任。2017年認定看護管理者を取得。2018年より現職。千葉大学看護学部附属看護実践研究指導センターや上智大学カウンセリング研究所でも学ぶなど、常に向上心をもちつつ、現在に至るまで一貫して東京女子医科大学病院でキャリアを重ねる。

これからの看護職は高齢化社会を見据え、いろいろな職種を巻き込みながら患者さんを守っていくことが大切です。患者安全を推進し、医師や看護職等の垣根を超えた連携などを大事にしながら、患者さんを生活者ととらえた全人的ヒューマンケアの担い手を育てます。

医療安全を徹底し愛をもって患者視点の看護に取り組む

 本学の理念は「至誠と愛」、そして病院の基本理念は「患者視点に立って、安全・安心な医療の実践と高度・先進な医療を提供する」です。看護部の方針は大学と病院の理念に準じており、慈しむ心で身近な人に接するように、患者さんに寄り添った看護に取り組んでいます。
 今年度の看護部は、患者安全・倫理、看護の質(地域連携・看護記録)、キャリア支援・教育、働き方改革などを柱に、8つの目標を掲げました。そのなかでも倫理観の育成、患者安全は特に重要だと思っています。かつて当院は医療事故を起こしてしまった事実がありますが、そのことを不断に反省するなかで、やはり患者安全の徹底を中心に考えています。
 各部署では、毎日のように患者安全対策の検討や情報共有を進めています。また、月2回、患者安全対策の検討や情報共有、部署の病棟の垣根を超えてラウンドし合う取り組みを導入するなどもしています。新しい制度を作ることで、組織風土がだいぶ変わってきたと感じています。
 患者さん・ご家族の「いのち・暮らし・尊厳をまもり支える看護」の実現のために、私達もどうしたら命を守れるか、どうしたら暮らしを守れるか、どうしたら尊厳を守れるかを考えながら、今の看護の実践に落とし込んでいます。

個を大事にして看護職がもつ「強み」に着目し教育制度を改革

 看護部の特徴は、ひとことでいうと「みんなちがってみんないい」。個を大事にして、強みを生かしながら自分のやりたい看護に向って、自分らしく、一緒にやっていこうという考えです。5年ほど前からアプリシエイティブ・インクワイアリーという価値探究型リーダーシップを教育の基本にしているのですが、各部署で一人ひとりの強みを意識した職場風土が芽生えてきたと思います。例えば、皆さんに自分史を書いてもらうと、こんな特徴がある、あんな強みがある、だからチームとしてはこういうふうに伸ばしていこう、ということが見えてくる。
 いろいろな体験をして自分を深く見つめると、相手を知りたい時や看護にも役立ちます。皆が思い描いているものをそれぞれに語ることで、お互いの理解が深まり、チームが前向きになれるのではないでしょうか。
 また、当院は看護スペシャリストが多く、ほとんどの領域に認定看護師、専門看護師がいます。ロールモデルがたくさんおり、組織を超えた新しい分野の看護を開拓できるようにキャリアの支援に力を入れています。目標がある学生はもちろん、そうでない学生も、いろいろ見ていくなかでやりたい看護が見つかればいいなと思います。
 なお、新人看護職はプリセプター制度のなかの1ヶ月間はシャドーイングを実施。先輩看護職についてともに学び承認し合うということを意識的に行い、共同体としてお互いに成長していくことを大事にしています。当院のプリセプターシップの期間は3ヶ月間ですが、たくさんの先輩に出会っていろいろな看護観に出会ってほしいので、それ以降はチーム全体でフォローしながら教育します。
 クリニカルコーチもおり、主任や師長とともに三位一体で部署の教育を考え、育てています。

患者さんに学び看護の奥深さ、楽しさに触れてほしい

My Favorite

ウサギの置物は八千代医療センターへ赴任する時にいただいたもの。職場で常に見守ってもらっています。トートバッグは看護研究発表会を主催した時に、皆で作った思い出の品です。

 私は入職して以来、脳外科と神経内科が長かったのですが、看護師を辞めたいと思ったことはなく、逆に“これでやっていける!”と思ったことがあります。
 まだ訪問看護という制度がなかった頃、多方面の人たちの協力を得て人工呼吸器患者の在宅移行をしました。その時に、看護ってつながっていくんだな、看護って楽しいなと。それからはもう、この仕事に迷いはなく、その奥深さにはまりました。
 脳神経センターでの豊富な臨床経験は、今でいう多職種連携やチーム医療を取り入れた実践だったと思います。
 また、医療を行う日々のなかには、自分が行ったケアによって患者さんの状態が変わっていく瞬間があります。患者さんと一緒に変化を楽しむというか、患者さんから学ばせてもらうというか、毎日の勉強が尽きないので、そこに楽しみを見出してもらいたいですね。

患者さんを理解して全人的ヒューマンケアを担う看護職に

 これからの看護職は高齢化社会を見据え、いろいろな職種を巻き込みながら患者さんを守っていくことが大切です。「いのち・暮らし・尊厳をまもり支える」にはどうしたらいいか…例えば、身体拘束を余儀なくされる時には、安全と尊厳の間でジレンマに陥ることもあるでしょう。そんな時は自分が感じたことを声に出してください。私たちも一緒に考えることでジレンマの軽減につながり、それがよい看護につながると思っています。
 皆さんには、本学の理念である「至誠と愛」の精神をもちながら、患者さんを生活者としてとらえて、全人的ヒューマンケアの担い手になってもらいたい。熱い心、柔軟な思考、謙虚な姿勢。あとは人間性だったり自分の感性、五感で感じるものを大事にしてほしいですね。
 人の手と心に勝るケアはありません。心のこもった手厚いベッドサイドケアは、私たちが目指す看護です。